夏休みの宿題 自ら課してみた

 

夏休みなので推薦文を書きました。

 

「生きてるだけで、愛」

 

今夜、寝て起きたら朝に迎合されること。そのありがたみをなんとなしにアラームを止める手が忘れさせてしまうこと。

 

朝昼晩の三拍目にアクセントを付けたい時にそっとページをめくる本がある。本谷有希子さんの「生きてるだけで、愛」だ。

 

この本をはじめて読んだ中学一年生の私は、頭ごなしに画一化されがちな「メンヘラ」なヒロイン寧子の捨象しきれない愛おしさに衝撃を受けた。

25歳、無職、過眠症、鬱病。エキセントリックな彼女の生きづらさが返って普通を定義する。

 

ストーリーの重要人物に津奈木という同居人がいる。

ひとつ屋根の下。突沸するポットが使う光熱費を彼の味のなさが抑え、賄う。スマッシュを打たれても生返事でレシーブ。殴り書きをされてもすり減らない消しゴム。涙で海をつくられても雑巾でパパッと拭いて絞ってしまうような、そんな男だと言っておこうか。

 

二人の分かり合えた時間なんて5千分の1秒だったかもしれない。それは表紙にもなっている葛飾北斎さんの『富嶽三十六景』の中でも親しみのある『神奈川沖浪裏』が5千分の1秒のシャッタースピードで撮った写真と一致したように。

強烈且つ鮮烈な原体験を常識を弁えた大人が経験することによって、その衝撃を甘くも辛くも希う、味覚障害になってしまうのだろうか。グサッと鈍く響くフレーズをここに置いておきますね。

あたし、楽されると苛つくんだよ。あたしがこんだけあんたに感情ぶつけてるのに楽されるとね、元取れてないなあって思っちゃうんだよね。あんたの選んでる言葉って結局あんたの気持ちじゃなくて、あたしを納得させるための言葉でしょ?

 

 

最近、さよならをたくさん言いました。

別れがあるくらいなら出会わなければよかった。音楽を聴きながらパッキングをしていると心中を見透かさないで!というくらいに私を歌っている曲が耳に流れ込んできました。とんだ誘い水。なんということでしょう。頬を伝う生暖かさが源泉掛け流しかよー(笑)という具合に目を赤く腫れあげさせたのです。

想像力はある方だと思ってたんだけどな...。共感には優れない。

 

アインシュタインズさんのribbonという曲です。

 

スーツケースを転がしながら、この曲の具体的にどこが私に代わって情動表出しているのか?全ての光景をパノラマで脳裏に焼き付けてやろうと瞬きもせずに考えました。

 

すると、コアな部分が似ていたんです。家に着くなり直ぐに読み返しました。やっぱり。共感できたんです寧子に。幾夜もすれ違っては津奈木と私に吐瀉物を撒き散らす内弁慶な彼女に。

とっても嬉しかった。5千分の1秒だけでも、ハッピーアイスクリーム!ができて。

 

 

私たちは同じじゃないから分かり合おうとする。そしてまた、表現をする。アイドルという形でもそれが成せるのかもわからない。

 

昨年映画化もされた話題小説なのでわざわざ後押しする必要はないかと思いますが、気になった方はお手に取ってみてくださいね〜^^🤚🏻