一瞬しかない、お風呂ステージでビバノンノン

一瞬しかない*1が1月17日(日)オンラインYOIMACHIのお風呂ステージに事前収録配信で参加をした。

一瞬しかないがYOIMACHI*2に出演したのは今回含め2回、昨年4月に開催中止になった春のYOIMACHI2020を含めると計3回の出演を決めている。グループとして初出演だった春のYOIMACHI2019には現メンバーの中から喫茶めい*3と仆破フリル*4がステージに上がった。イベントは大塚のライブハウスや銭湯、バス、ボルダリング場などの様々なステージが設けられており、当時は大塚Deeperでのライブだった。仆破フリルはこの頃から銭湯好きを公言しており、MCで自然に銭湯の話題に触れることで次回以降の出演依頼への圧力とお風呂ステージへの意欲的姿勢を見せていた。そんな彼女にとって昨日のライブは念願だったと言える。それだけでなくグループはザ・ドリフターズの「さよならするのはつらいけど」をカバー曲で持っていたため、ファンの間でも前々から期待の声があった。

情勢を踏まえ無観客のインターネット上での公演となり、全ステージを無料で視聴することが出来た本公演。時間調整の時点で一瞬しかないの視聴者数は300人を超えていた。定期的に開催している自主企画イベント「今日もなにかの記念日」での動員は100人を超えたことがなかっため、グループとしての最高動員を記録したことになる。これにより本来であれば昨夜催される予定が延期となった「デビュー2周年記念日」へのメンバーからの怨霊も少しは成仏できたのではないか。また事前収録だったためグループ総出でリアルタイムに実況ツイートするなど、配信だからこその楽しみ方ができたのも新鮮な体験だった。

画面が切り替わり1曲目「Twinkle」。名曲と名高いこの曲は小出祐介さんがアイドルベスト2019インディーズ編に挙げるなど、業界人からも注目されるスタンダードナンバーだ。湯船に腰掛けお馴染みのローファーと白いソックスを脱ぎ裸足で踊るメンバー。通常の持参した椅子の中から星を取り出すパフォーマンスはダンスに代替され、まさに新生、ならぬ新星Twinkleの誕生であった。続く自己紹介。喫茶めい、銀海、仆破フリル、晴後すずめの順で面の内をまだ見せんとばかりの挨拶をしていった。新メンバーの晴後すずめ*5はフレッシュさもありつつ、堂々とした話しぶりで人を惹きつける姿は「画面の向こう側で観ている人を絶対に楽しませる」というマニュフェストを公示する様にも見えた。2曲目「雪と宇宙」。バラード調のこの曲はお風呂場の天然リバーブが気持ちよく聴かせにきた。またストリングスの存在感が増し壮大になる曲調に合わせてズームアウトするカメラワークも秀逸であった。大塚記念湯は脱衣場、風呂場共に天井に宇宙のモチーフがあり、曲繋ぎにはフルスクリーンに壁画が映し出される「雪と宇宙」に掛けた粋な演出があった。3曲目「きっと君を好きになる」。イントロで洗い場からぴょこんとメンバーが頭を覗かせる振り付けには、愛らしさにモグラ叩き*6のように叩いてしまいたいと思った人も少なくないのではないか。まだ音源化されていないこの曲はシングルのA面にも、アルバムのトップにも持ってこられるインパクトを持った曲だ。どのようにリリースされるのか今後注目すべき点だろう。

ここから空気は一変、"奴"の登場により今までの平穏さは掻き乱された。少し前まで銀海*7はメンバーの仆破フリルから絶大な信頼を置かれていた。以前話を聞いたところ「よく友達がいないことをブランディングの一環として行う人が居るが、嘘偽りなく銀海ちゃんには本当に友達が居ないから」と話してくれた。確かにそれは信頼しかない。しかし遡ること数ヶ月前、有るまじき行為が発生したという。なんと銀海はMCに自身の友達であるポンプ君*8を呼び、仲睦まじさを見せしめるようになったのだ。それも1度でなく何度も繰り返しているらしい。初めはプライベートをステージに持ち込む違和感があったものの、いつしかファンの間に浸透していき身内のように扱われるようにすらなったが「まだメンバーへの説明が必要」と関係者は語る。そして昨晩は銭湯に因んだシャワーキャップ姿で登壇し「銭湯のいいところ」をメンバーに質問していった。喫茶めいは銭湯と戦闘を聞き間違えたのか「バトルフィールドですね。」と的外れな解答をし、晴後すずめはマイクを牛乳瓶に見立てて喉越しを披露した。仆破フリルはケロリン桶片手にあきら100%をオマージュしたフリル100%のネタでメンバーを苦笑させ、銀海は発狂。一瞬しかないが「だれかの『心のやらかい場所に』」のコンセプトで活動できるのもこのような五里霧中さでは時間の問題と思わされた。そして重たい空間を打破したのは喫茶めい。虫も殺さぬ雰囲気をまとった彼女はポンプ君の胴体を鷲掴み「ウチのもんがすみませんでした。」とメンバー全員に謝るよう促した。瞬時に空気を読み行動に移せる判断力。彼女の新たな一面は視聴者の心も鷲掴み、ギャップに驚くコメントも見受けられた。

気を置く間もなく流れ出したのは最後の曲「さよならするのはつらいけど」。響き渡るビバノンノンに心做しか湯が喜んでいるように感じられたのは気のせいだろうか。もしかしたら今回のライブはこの曲の帰巣本能が引き寄せた機会だったのかもしれない。それはそうと今までのステージングはこの曲を歌うための序説に過ぎなかったと言わんばかりのクライマックスだった。

アウトロにメンバーが声を揃えて言った「一瞬しかないはこれからも精一杯頑張ります!」。この言葉に他意はないだろう。少し変わったメンバーだが悪い子達ではなさそうだ。その混沌さは入浴剤のように、誰かの心に溶け込んでいくのかもしれない。筆者がそのうちの1人であるように。

 

 

 

 

*1:緊張と緩和で独自のアンビエンスを作り出す日本の第9世代コメディアン

*2:2016年から始まった東京・大塚の最大サーキット音楽イベント

*3:ゆでたまごを一口で食べる生き物

*4:バイトに落ちすぎてもはや自分はバイトに落ちるバイトをしているのではないか?と口座を確認するも入金されておらず首を傾げる残念な人

*5:未知数の魅力を秘めた宇宙が好きな新メンバー

*6:本当に美しい物は他の何かに汚されるくらいなら自らの手で壊してしまいたいとおもう衝動の例え

*7:狂気的な愉快さはまさにミッドサマー

*8:銀海のイデア界に生息する友達